犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。
元々菱川は凜の祖父が事業に大成功して注目されるようになった、所謂成り上がり一家だ。

そのせいで人脈が他家と比べたら全然少ない。

その分人との関わりに重点を置かないといけないのだが、凜の父親は言葉の裏を読み取ることが不得意だ。

そのせいで上手く取り合ってもらえていない。

俺でも気づくようなことを俺の父親が見逃すわけがなかった。

だから馬鹿げた提案を持ちかけてきた。


「それで、お前は菱川の娘と仲良かっただろう?だから菱川を吸収するついでに婚約者として迎えたらどうだ?」
「断る」


即答した。

そんなことをしたら俺が雅楽代から独立できなくなるだろうが。


「そうか。じゃあ菱川凜には他の婚約者を「それも却下で」


こちらも即答。

知らない奴が凜の隣に我が物顔で居座っているところを想像するだけで腸が煮えくり返る。

俺ですら易々といられない場所をどこぞの馬の骨に奪われてたまるか。


「さっきからあれもヤダこれもヤダって・・・お前は駄々っ子か」


歳を食った父親が「駄々っ子」と言うのはなかなかキツい。しかも真顔で。

それは一旦スルーするとして、凜をどうするか考えないといけない。

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