犬猿の仲の彼の専属メイドになりました。
たかが年下の言うことだと割り切りたいのに、なにかとカンに触って喧嘩をしているうちに私達は犬猿の仲と称されるようになっていた。


『まぁまぁ2人とも落ち着いて。凜はお姉さんなんだからちょっとはガマンしなよ』


そんな私達を止めるのは兄である菱川士郎(ひしかわしろう)の役目だった。

私よりたった1つしか変わらないのに、一丁前に年上ぶるのがあまり好きではなかった。

たかが1年、されど1年とその差を見せつけられているようで。

勉学も礼儀作法も私の方が出来るのになんで父は兄ばかりを褒めるのかずっと分からない。

今だって兄よりも偏差値の高い高校に通っているというのに。

なのに、なんで私を捨てて・・・────。


「おい凜」
「なんですか」
「さっきからボーっとして同じとこばっか掃除してるぞ。何か気になることでもあったのか」
「いいえ別に」


遥くんに指摘され、私が感傷に浸っていたことに気づいた。

いくら過去を悲観しようが、父が兄を選び私を雅楽代に売った事実は変わらない。

自分が事業に失敗して雅楽代に吸収されたくせに、兄の将来のために雅楽代のメイドになれと私に説き伏せた父のことなんかもう知らない。

そう思っててもついつい思い出しては落ち込んでしまう。

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