氷の華とチョコレート
「あっ、……はい、女性物が嫌でなければお使いください」
やっぱり、余計なお世話だっただろうか? ブルーとはいえ、女性物、だし……。
差し出したままの傘の、行き場がなくて、私の顔はどんどん熱くなる。
「とんでもない! 助かったよ、でも君の傘じゃ帰り大変じゃない?」
「私は大丈夫です、ロッカーにもう一本ありますから、またこちらにいらした時にでも返して頂ければ……」
「じゃあお言葉に甘えて、……後、名前聞いてもいい? 返す時に困るから」
そう言って、傘を受け取りながら、男性は、一枚名刺をくれた。
『株式会社Re: 第一営業部 真間瑛生 eiki mama 』
まま えいき? 手書きの携帯番号も、アドレスも書かれていない、まっさらな名刺。
「氷室美羽です、その傘、私が受付にいなかったら、いる子に渡してもらえれば大丈夫なので」
「わかった、ありがとう」
真間さんはそう言って、ロビーを後にした。
「めずらしいじゃん、そんな顔してもらった名刺持ってるなんてぇ~♪」