氷の華とチョコレート

 忘れもしない、その声に、ドクンッと心臓が嫌な音を立てる。

 手に持ったショッピングバックを思わず落としそうになり、ギュッと、震える手で持ち手を握りしめた。


 ―――…嘘、でしょ?


 恐る恐る声の方を向くと、目の前に、元カレの栗栖さんが立っていた。


「久しぶり、元気だった?」

「……」


 まるで何事もなかったかのように、出会った頃のような、爽やかな笑顔で彼は笑う。けれど、目の焦点が合っていなくて、どこか普通ではなかった。

 身体中から、危険信号のように強い鼓動が響いてくる。

 どおしてここにいるの? 今は、地方の実家にいるはずなのに……。


 ―――…怖い


 一人で会ってはいけないと言われている。真間さんは、今出張で地方だし、彼の事はまだ言えていない現状だ。暁陽と菜摘に連絡しなきゃ……。気付かれないように、鞄の中のスマホを手にした瞬間。


「―――…美羽? 聴こえてる?」

「……っ!?」


 いきなり至近距離で、顔を覗き込まれて、身体中に電気が走ったようにビクッとした。



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