氷の華とチョコレート

 背が高く、自分に自信のある声に、破壊力のある笑顔。

 小山内先輩の教えてくれた通りの特徴のまんまのその人は、確か、真間さんと同じ会社の……確か、平井、さん?

 私は、心底ホッとして、震える自分の身体をギュッと抱きしめて、しゃがみ込まないように支えた。


「……誰だよ? お前はっ!」


 平井さんの掴んだ手を、思いっきり振りほどくように払って、栗栖さんは目の前の彼を睨む。


「たまたま通りかかった、彼女の彼の、先輩の鈴木(・・)と申します」


 振り払われた手をひらひらさせて、平井さん、あれ? 鈴木、さん? は、ニッコリと自己紹介をした。


「美羽の、彼の先輩?」


 胡散臭そうに、鈴木と名乗る男の人を睨む栗栖さん。


「取り合えず、可愛い後輩の彼女が目の前で、嫌がってるのに、その男に連れ去られそうになってるの見ると、流石に助けたくなるよねぇ?」


 そう言って、口の端を上げて笑う、鈴木さん? の目は、真っ直ぐに栗栖さんを捕らえていて、全く笑っていなかった。



< 107 / 310 >

この作品をシェア

pagetop