氷の華とチョコレート
「取り合えず、警察でも呼んでおく?」
「……っ!? 必要ない、もう帰る!」
警察と言うワードに、栗栖さんはあわてて言い捨てるように言葉を投げて、その場を離れて行った。
「……」
助かった……。
私は、泣きそうな気持ちで震える自分の身体を、再度ギュッと支えるように抱きしめた。
「ありがとう、ございます……、鈴木、さん? で良かったでしょうか?」
お礼を言うと、鈴木さんと名乗った彼は、人差し指を口元にかざして、内緒のポーズをしたまま、さっきとは全然違う、優しい顔で笑った。
「取り合えず、一人になるのはマズいから、呼びたかった人、呼び出していいよ? あいつが今いないのは知ってるよね? ちょっと話したいことがあるから、あそこのコーヒーショップでいい?」
「……えっと、はい」
立て続けに言われた言葉の返事が、すべてイエスだったので、肯定してから、暁陽と菜摘に電話をかけた。