氷の華とチョコレート



 鷹井先輩に、さんざんカラカわれたあの日から、ちょうど一週間目ーー


「氷室さん、当番行こう」

「はい」


 今日は、同期の中野さんと、夕方の受付当番だった。


「今日は夕方当番だし、同期同士で気が楽だわ~」

「私もよ」

「先輩たちいると気が抜けないもんね~」

「本当、中野さんで良かったわ」


 なんて、話は合わせるけれど、中野さんは保身第一主義で、先輩の前では私を無視してきた人。あの場にいたら、仕方ないとは私も思う。でもやっぱり、気持ちがついていかない。二年目になってから、謝ってきて少しずつ話すようになったけど、心を許すことはきっとない。

 まぁ、イジワルしてくる先輩達よりは、全然マシなんだけどね……。


「……中野さんは、今日デートなの?」

「えっ? わかる?」


 夕方当番は、接客数が少ない分、組んだ人との会話が増える。


「うん、今日のネイルすごく可愛い」


 だから、私は、自分のことを話さないために、彼女のことをたくさん聞く役に徹する。


「実はぁ、スマホに載ってるサービスチケット使ってやってもらっちゃった♪ そこでね…――」


 中野さんは、楽しそうにネイルサロンでの話を始めた。秘書課では、美容系かイケメン情報か、恋愛系の話を振っておけば、だいた2時間はもつ。


「あっ! ゴメンちょっと抜けてもいい?」

「大丈夫だけど、どうしたの?」



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