氷の華とチョコレート

「……」


 今の言葉は、暁陽なりの優しさだ。そして私を通して、通話の向こう側の真間さんにも、伝えている言葉でもあると思った。


「……暁陽、ありがと」


 何とか笑顔を作ってお礼を言おうと、暁陽は仕方ねぇなと目を細めた後、菜摘を連れて、またもう一つの部屋へ行ってくれた。


『……氷室さん、もう大丈夫? 話せる?』

「はい、すみませんでした」

『……』
「……」


 けれどお互いに言葉が続かない、いきなりあんなことを打ち明けられても、すぐ言える事なんてないだろう、私から、何か話さなければ……。


『……栗栖、さんだっけ?』

「!? はい」


 ためらいながらも話し出す真間さんの声が、落ち着いたトーンで耳に響いてくる。


『聞いたばかりで、まだ上手く言えないんだけど、ちゃんと過去の事だって理解してるから……、あとオレにも出来ることがないか、考えてみるよ』

「えっ?」


 真間さんが、考える? あんまりにも予想外な言葉に、驚いた声を上げてしまった。



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