氷の華とチョコレート

「そんなことないです! 私には真間さんが一番です」


 あっ……。

 ついフォローの為に突いて出た言葉に、自分でも驚いてしまう。やだ、思わず軽口を叩いてしまった……。

 真間さんはフッと笑って、ありがとうと言った。


「……?」


 あれ? ……もしかして、今の言い回しは、話しやすいように、わざとだった? 


「……???」


 確かに、自虐的な言い方をする真間さんは初めてで、違和感があったけれど……。えっと、……最初からじゃ、なかったよね?


『明日も、この時間に電話するから取ってくれる? 話したいことがあるから』

「……は、はい」


 いつもと同じトーンの真間さんの声。私は、狐につままれた気分で、あわてて返事をした。


『明日は、氷室さんのお家?』

「そうです、着替えもないので……」

『何かあったら、平井さんに連絡して? あの人、しばらく近場の催事だから、駆けつけてもらえるから』


 そんなフォローまで、ちゃんと考えてくれていることに、胸が熱くなった。


「ありがとうございます、明日お電話待ってます、お仕事頑張ってくださいね」

『うん、頑張ってきます、……氷室さんも仕事無理しないで、……今日は、おやすみ』

「はい、……おやすみなさい」


 通話が途絶えて、ホッと息をつく、暖かい気持ちで電話を切ることが出来た。



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