氷の華とチョコレート
「困ります、こんなに……」
顔を上げると、目の前にアーモンドチョコレート色の瞳があった。その瞳が、ふんわりと笑う。
「君の気持ちが嬉しかったから、そのお返しです、いらなかったら捨てていいし」
そ、そんなこと、出来るわけないでしょう!?
思わず言いそうになった言葉を、あわてて飲み込んで
「……あ、りがとうございます」
ぎこちなく答える私に、真間さんは、くすりと笑う。
「毎日受付にいるわけじゃないんだね?」
「はい? この時間帯は月曜と木曜が多いです」
もしかして、一度来てくれたのだろうか?
「オレも、木曜日が多いかな?」
「……」
そう言えば、どちらにご用なんだろう? 接客した記憶は、この前くらいしかない。
「じゃあ」
「あっ、はい! わざわざ、ありがとうございました」
私の挨拶に会釈を返して、真間さんは、玄関の向こうに消えていった。
「氷室さ~ん、どうしたの?」
えっ?
振り向くと、興奮気味の中野さんがこっちに駆け寄って来る所だった。
「この前お貸しした傘を、丁寧に返して頂いていた所よ? 先週の夕立で困っていらしたから……」