氷の華とチョコレート

「弟さんやご家族の負担も多かったみたいだから……、家に閉じこもっているより、ここなら彼自身も何か変われるかも知れないよね?」

「……」


 何故だろう、気持ちがモヤモヤとしてしまう。良いことのはずなのに……。


「氷室さん、どうかした?」

「……いえ、真間さんたちは、栗栖さんの今後の事まで考えていて、凄いな、と……」


 正直色々な事があり過ぎて、彼の事まで考える余裕はないし、そこまで考えてもらえている彼に、複雑な気持ちが拭えなくて。 ……自分の心の狭さを感じて、落ち込んだと言うのが正しいかも知れない。


「あぁ、重要なのは彼の事じゃなくてね、ここに入れば、最低でも三年、長くて十年は、氷室さんの所にあの人が来る事はなくて、安心出来そうって話なんだよ?」


 えっ?

 真間さんの言葉に驚いて顔を上げると、イタズラっぽく笑う彼のアーモンドチョコレート色の瞳。



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