氷の華とチョコレート

「仕方ないよ、ウチらまだやっと二年目だし、一人前にもなってないのに移動は難しいよ」

「うん、それは課長に言われた、だからせめて秘書課の皆さんが迷惑しない場所の担当になりたいの」

「ホントいつ見てもタイヘンだよね、美羽んトコロ、オンナの戦場って感じ?」


 お昼休み…―――


 唯一話しがわかる同期の設楽るりは、美味しそうに社食のAランチのエビフライを食べて言った。

 るりは、きっぱりサッパリとした性格で、見た目とか妬みとかと無縁な人。だから私が安心して自分を出せる、数少ない友人の1人。

 人に見られる仕事とイジワルな先輩たち、それらから離れられるお昼休みとアフター5だけが、私の大切な癒しの時間。


「るりはいいな、私も商品管理に行きたい……」


 本当は人前に出るより、商品のタグ付けとか登録とか棚卸しみたいな仕事の方が、好きなんだけれど……。

 でも、一度配属されたからには、我がままは言えない。


「美羽、顔がキレイだから、外されないんじゃない?」


 うぅっ、そんなにあっけらかんと、夢を砕かないで欲しい……。

 ガクッと落ち込む私に、るりはあわててフォローを入れる。


「まぁ、美羽の性格は、こっちの仕事の方が合ってるよね!」


 うんそう、るりの言う通り、言う通りなのよ……。



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