氷の華とチョコレート

 ゆっくりと遠回りして、公園の途中から通りを右に曲がると、すぐ目の前に赤い屋根の洋風な建物が目に入った。


「あれだよ」


 二階建ての中庭のある木々の多い広い建物、どことなく暖かい雰囲気がして、ホッとする。 


「まるでお家みたいな所ですね」

「そう、ついてる名前も『赤い屋根の小さなお家』って言うんだ」


 へぇ


「ぴったりな名前ですね」

「実は、そうでもないんだよ?」


 ?

 真間さんの言葉に私は首を傾げた。そして、すぐに言葉の意味を理解する。どんどん歩いて行くと、その赤い屋根の家が目を見張るほどの大きさになっていく。

 私は、思わず吹き出してしまった。

 でも全然、小さくはないけれど、そんな名前をつけたくなるような、可愛さがこの家にはあった。


「本当だ、小さくはないけど、可愛いお家ですね」



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