氷の華とチョコレート

「……笑ったな?」


 バツの悪そうな男性の声に、私はハッとして、あわてて口元を押さえた。

 いけない、お客様なのに!


「失礼致しました、あいにくビニール傘を切らしておりまして!」

「……仕方ない、走って行くか」

「……」


 そう言えば今日私、折りたたみ傘を鞄に入れたかも知れない……。


「あのっ! 少しお待ち頂けますか?」

「……オレ?」

「はい」


 私は頷くと、受付カウンターにしゃがみ込み、奥に入れた自分の鞄を取り出してみる。

 あっ、やっぱりあった。


「あの、これでよければ……」


 少し古い女物の傘だけど、ブルーのグラデーションの柄だし、男の人でもきっと、これなら恥ずかしくないだろう。


「……」


 差し出した傘を、その男性はマジマジを見ていた。

 あ、れ? 余計だったかしら?


「……コレ、君の?」



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