双子アイドルは俺様暴走族!
《なんだよ、何か用事か?》
「用事っていうか……あの、い、今忙しい?」
《今移動中だけど?》
「そ、そっか」

よかった。
撮影やレッスンの最中じゃないみたいだ。
あたしはホッと胸をなでおろす。

と、同時にそれならそんなに不機嫌そうな声を出す必要ないのに。
と、ムッとする。

《で、用事は?》
「あ、あのね……えっとぉ……き、今日なにか雑用とか、ない?」 
咄嗟にそんな嘘をついていた。

『会ってほしい人がいるの!』
なんて言って素直に頷いてくれる相手じゃないことは、すでに理解している。
《……雑用?》
「そ、そう! たとえば仕事が終わった後とかで、部屋の掃除とかさ!」
《家の掃除はメイドがやっている。俺の家はいつも綺麗だ》

「そ、そうですか……」
そういえば平野家は大そうな金持ちでしたっけ?
うちに毎日毎日高級食材を送りつけるくらいのね。

《どうした、雑用がしたいのか?》
「うっ……したいっていうか……」
『雑用がしたい』なんて事を言えば、晴はどんな申し出をしてくるかわからない。
< 189 / 340 >

この作品をシェア

pagetop