双子アイドルは俺様暴走族!
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その日の仕事がすべて終わった車の中、俺は運転手へ向けて「今からカヤちゃんの家に行ってくれ」と、言った。
隣に座っている晴がけげんそうな表情をうかべ、丸本が何事かと後ろを振り向いた。
「カヤに何の用事だ?」
「晴にも関係があることだよ」
「俺にも……?」
晴は首をかしげる。
「しかし圭様、カヤ様は今日は大量出血で体調が悪いのではないでしょうか?」
丸本が心配そうにそう言う。
だけど俺は「その心配はない」と、言いきった。
「カヤの出血が気になったから、今日は松井家に高級レバー肉を送っておいたんだ」
「……さようでございますか……」
丸本は小さな声でそう言い、それでは言い返すことはなにもないというように、前を向きなおした。
「俺とカヤになんの話だ?」
「カヤちゃんの家についてから話すよ」
俺はそう言い晴から視線をはずした。
車は道順を変え、自宅から大きくそれた。
家が遠ざかるにつれてカヤちゃんの家に近づいて行く。
もっと近くならいいのに。
俺がカヤちゃんの彼氏なら、辛い思いも寂しい思いもさせない。
膝の上でキュッと拳を握りしめる。
そんな俺を、晴が不思議そうな目でみていたのだった。