双子アイドルは俺様暴走族!
今負傷してしまった晴に頑張れという子は1人もいなかった。
誰もが無理をせずに休んでほしいと思っていたかもしれない。
あたしだってそうだ。
だけど、晴はそれを望んではいない。

晴が休むことを望まないのなら、あたしは応援するしかない。
誰よりも大きなあたしの声に、晴がこちらを見た。
あたしの視線と晴の視線がぶつかりあい、絡み合い、瞬時にそこになにかが生まれた。
晴の中の戸惑いや、焦りが伝わってくる。

それに対し、あたしは微笑んだ。
あたしの微笑み程度でどうにかなるとは思わなかったけれど、それでも何かが変わってくれればいいと思って、微笑んだ。

やがて晴は自分の時間を取り戻したように、ゆっくりと歩き出した。
痛む足を引きずって歩く姿は一見痛々しいけれど、そこには強い意志が込められているように、あたしは感じた。

「頑張れ、頑張れ晴!!」
得点を入れられない、ボールにも触れられない晴を、あたしはいつまでの応援していたのだった。
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