双子アイドルは俺様暴走族!

いいや、晴なら黙っているハズがない。
「もしかして、やり返す機会を狙っているの?」
湯けむりに包まれた中、あたしはそう聞いた。

しかし、晴はゆっくりと左右に首を振ってそれを否定したのだ。
「どうして?」

「試合が終わったあと、圭に言われたんだ。『黒猫をもらう代わりに、カヤちゃんから手を引いてやる』ってな」

「あたしから手を引く……?」
あたしは通常の何倍も目を見開いて晴を見た。
まさか、あたしごときのために晴は黒猫を手放したというのだろうか。

「圭は本気になればどんな卑怯な手を使ってでも女をおとす。ほっておいたお前に危害が加わるのは目に見えていた」
冷静な口調でそう説明する晴に、徐々に怒りが湧き上がってくる。

狭い部屋の中、あたしは晴の体を壁に押し当てた。
「誰がいつ、守ってほしいなんて言ったのよ」
「はぁ?」
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