双子アイドルは俺様暴走族!
あたしは再びその建物を見上げる。
今日はとてつもなく貧血なんだからこんな建物を見てクラッときてもおかしくないのに、クラッと来ない。

すると紳士が前に出てあたしを促した。
「失礼かと思いましたが唇の血色が悪いようでしたので、車内で輸血をさせていただきました」
「ゆ、輸血!?」

「はい。カヤ様の血液型などの情報は桃谷高校からいただいているため、その血液をすぐに車まで届けるように指示し、そして到着までに輸血を済ませました」
「は……はぁ、それはどうも……」

寝ている人間に勝手に輸血できるような世界って、どんな世界だ。
そう思うものの、建物の威圧感にクラッと来なかった理由はこれで解明された。

入り口の事務室で一言二言話た紳士は、そのまま来客用のスリッパにはき替えた。
「カヤ様はこちらです」
あたしも同じスリッパをはこうとしたところ、スッと差し出された室内靴。

「あ、ありがとう……」
足を入れてみるとサイズもピッタリ。
本当にあたしの情報をなにもかも知っているみたいだ。

桃谷高校め、あたしのプライバシーを侵害しやがって。
生徒の個人情報くらい守りなさいよ!
1人でプリプリしていると、大きなラセン階段が見えてきた。
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