アリス人形
「アァ〜リィ〜スゥゥ〜♪」

ソレは、おぞましく冷たい声で私を呼んだ。

ソレは黒い塊…

その時の私には、それ以外にソレが何なのか、全く分からなかった。

叫びたくても、声が出ない。

逃げたくても、足が動かない。

目を逸らしたくても、首が回らない。

せめて、目をつぶりたい。が、まぶたさえも動かない。

動かせるのは脳だけ。

時間が、恐ろしいくらいに長く感じた。

「ミツケタァ…。」

ソレはゆっくりと近づいてくる。
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