アリス人形
「うん。でも、帽子屋さん何処だろ?」

亜里珠は帽子屋も森に入ったことを知っていた。

「ケータイなんて便利なものないし…。」

頭を悩ませていると、チェシャ猫が不思議そうに亜里珠の顔を覗き込んできた。

「何を言っているんだい?森に頼めばいいじゃないか。」

「え?どうやって?」

「森はアリスが大好きだからねぇ。どんなふうに頼んでも平気さぁ。」

(答えになってない気が…;;)

チェシャ猫はにやりと笑う。外に出た彼女は、黒猫の姿に戻っていた。

「少し疲れたわぁ。昼寝でもしようかねぇ。」

「あ…うん。なんか、また助けてもらったみたいだね。ありがとう、チェシャ猫。」

亜里珠は伸びをするチェシャ猫に素直にお礼を言った。チェシャ猫は目だけ亜里珠に向け、尻尾をゆらゆら揺らした。

「それがチェシャの役目だからねぇ。海に行ったら芋虫を探すの忘れないようにねぇ。あの子は真実を教えてくれるからぁ。」

「うん。わかった。」

亜里珠の返事に満足したのか。チェシャ猫は森の奥へと消えていった。
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