アリス人形
――ゾクッ

全身に鳥肌が立った。それは、身体が自由になった証。ぶわっと汗が吹き出す。

崩れるように床に座り込んだ亜里珠は、ゆっくりと辺りを見回した。

父と母は、まるで蝋人形のように固まったままだ。

…亜里香が、いない。

「あり…か?」

絞りだした声は、ひどく震えていた。

停止した世界。

謎の黒い塊。

消えた妹。

夢なら早く醒めてほしい。

亜里珠は震える体をどうすることも出来ずにただ、放心状態だった。
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