アリス人形
しかし、遅かった。

扉の向こう側では、既に亜里珠の体半分がガラスの向こう、鏡の国へと引きずり込まれていた。

「行くなっ、アリス――ッ!」

伸ばした手はあと一歩のところで届かず、無力な両手を地面に叩きつけ、帽子屋はうずくまった。

「くそ、くそ、…くそ!!」

「“彼”は一体彼女をどうする気かしら?」

人馬は鎖されたガラスの向こう側を見つめて呟いた。

黒ウサギも一緒だわ…。

目を細めた矢先、赤い瞳と目が合い、即座に視線を反らす。


「知るかよ。くそっ!アリスを連れ戻すぞ、人馬!」

立ち上がった少年を背に、人馬も身を引き締めた。

「ええ。今度のアリスは死なせない。」

魔方陣を描き、再び鏡の国への扉を開かせた。

「待ってろよ、ジャック!!」
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