アリス人形
「人馬!何処にいるの!?」

震える足に喝を入れつつ、亜里珠は人馬を捜す。

後ろにいた男は追い掛けてくる気はなさそうだ。亜里珠の足音だけが虚しく響き渡る。

やがて、目の前にぼんやりと人影が浮き上がってきた。

「人馬?」

影がこちらを向くのがわかった。希望の光が亜里珠の瞳に宿る。

「人馬!」

再び呼び、駆け出そうとした亜里珠は顔を強ばらせた。

違う。

直感的にそう思った。
最初に聴いた彼女の声を思い出す。

『初めまして、アリス。私は鏡の国の住人、人馬よ。』

女性だった。神秘的な、何処か気品溢れる声だった。

でも、どう見てもあの影は──。


ふと思い出したように後ろを見る。

…何も見えない。

そして、視線を戻した亜里珠は息を呑んだ。
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