アリス人形
それは、誰の声?

(駄目だよ…そんな、調子よすぎる…これは…幻聴……?)

アリスの目から涙が溢れる。

そう。物語を変えてしまったのは…シロウサギが「愛しい」とは別の対象になってしまったのは…きっと、彼と出会ってしまったから。

彼に対し、いつの間にか特別な感情を抱いてしまったから。

(ばか、わたし…なんで、このタイミングで…きづくの……)

私が愛しいのは…──、

「ぼぅ…しや、さ…ぁ!!」

──ドカッ!

身体が激しく揺らぎ、意識が飛ぶ寸前、喉が圧迫から解放された。

むせ返る中、ぎゅっと抱きしめられる。それがどれだけ亜理珠を安心させただろうか。

「よく耐えたな、アリス。…生きててくれて、ありがとう。」

「帽子屋さぁん…!」

泣き付く亜理珠を、帽子屋はそっとなだめた。
その横に人馬が降り立ち、唾を吐き捨てるジャックを睨み付けた。

帽子屋も視線を彼に向け、ただ無言で怒りをぶつける。

「へっ、餓鬼同士で恋愛ごっこかぁ?反吐が出るぜ。」

「…黙れ、ハートのジャック。」
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