アリス人形
「女王って…日本にはそんなの…。」

そんな亜里珠に対し、シロウサギは仕方なさそうに再び口を開いた。

「ここは日本であって日本ではないのです。」

亜里珠の顔が引きつった。シロウサギは構わず続ける。

「でも日本です。」

「待って!おかしいよ。」

今度はシロウサギの顔が引きつる。

「だって、走ってきたんだよ!家から森を抜けてここまで!…って、あれ。」

亜里珠は反論するのを止め、少し黙り込んだ。

「家の近くに…森なんて、無い。」

亜里珠の家の周りには、ビルはあるが、森林なんてありゃしない。
しばらく亜里珠を見上げていたシロウサギは、ふいっと前に向き直り、

「さ、遅れてしまいます。」

走り始めた。亜里珠は混乱しつつも妹を助けるため、シロウサギを追い掛けるしかなかった。

「ちょ、速っ!」
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