アリス人形
「シロ…ウサギ?」

やっと出た声は裏返り、かすかな風が頬を撫でた。と、




「次はアリスですね。」

シロウサギの声が降ってきた。

「え?」

――トン…

何かが軽やかに舞い降りてきた。
まず亜里珠が見たのは茶色い靴。そして長い足。おしゃれな赤いジャケット姿の…眼鏡をかけた銀髪の青年。頭から伸びている白く長い耳が、シロウサギだということをはっきり認識させた。

「シロウサギ…?」

「ええ。正装とは女王と同じ人に化ける事を言うものです。」

「動物が人化するなんて…、」

女王はどれだけ権力があるわけ?そう亜里珠は、女王に会うことが不安になった。

「さあ、アリス。貴方にも衣装を着てもらいます。こっちへ来て下さい。」

苦笑するシロウサギは、亜里珠の手をぐいっと引っ張った。

「正装って…わっ!」

ぶわっと風が襲い、亜里珠は、そのままシロウサギの胸に抱かれた。

「ちょ、ちょっと!なに!?」

シロウサギは、混乱する亜里珠の両肩をポンッと優しく叩いた。

「はい、着替え終了です。」

「へ…?」

シロウサギの言葉を聞き、ふと自分の体に違和感を感じた。

「う、わっ…。」

自分の身体を見た亜里珠は、目を輝かせた。

ロングTシャツにジーンズ姿だった亜里珠の服装が、赤いエプロンドレスに変わっていたのだ。
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