アリス人形
――チピピピピ…

小鳥のさえずりが真上から降ってくる。そよそよと心地よい風が亜里珠の髪を揺らした。

まるで違う場所にワープしたみたいだと亜里珠は顔を上げた。

「…有り得ない。」

そして、その考えは見事に当たった。

亜里珠は沢山の木に囲まれていたのだ。

「ここは…森?」

問うが、シロウサギの返事はない。立ち上がった亜里珠は辺りを見回し、サーッと血の気が引いた。

「嘘…。シロウサギ?」

近くに人の気配は、ない。

「ま、迷った?…マジで!?」

半泣きになりつつ、亜里珠は前へ進みはじめた。
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