アリス人形
アリスはお茶会に参加した。おしとやかなアリスを、帽子屋は見ないように必死だった。見たくなかった。見るのが怖かった。

そしていつの間にか、本当に気付かぬうちに、アリスは姿を消していた。

正確に言うと、再び姿を現したシロウサギを追い掛け、どこかに行ってしまったのだ。










その後、帽子屋は知ってしまった。

アリス…否、ありすは、無理やりこじ開けられ、出てきた記憶、隠していた真実の重みに耐え切れず、自ら命をたってしまったことを。

しかし、帽子屋はその真実を簡単には信じられなかった。
だからまた、ありすが現われるのを待つことにした。

帽子屋は待ち続けた。

ずっと、ずっと、ずっと…。

唯一のファミリーだった彼女を、

490560時間、ずっと…──。
< 64 / 163 >

この作品をシェア

pagetop