アリス人形
帽子屋は、ふと我に返った。何を今更思いふけっているのだと、急に恥ずかしくなり、指で頬を掻いた。

「思い出しなさいなぁ、アリス。」

「ふふっ、チェシャ猫?何を思い出せというのかしら?」

アリスは相変わらず正気を取り戻せないでいるようだ。

帽子屋は願った。このアリスにはありすと同じ運命を辿らないでほしい、と。

帽子屋はそっと、アリスの手を握った。

「おい、アリス。しっかりしろよ。目、醒ませよ。」

アリスは首を傾げる。

「帽子屋さん?私は目を覚ましているわ。」

「てめぇに話し掛けてんじゃねぇ!俺は亜里珠に話し掛けてんだ!」

苛立ち、帽子屋は吠えた。
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