アリス人形
ふと、亜里珠の脳裏に狂気に満ちた三日月ウサギの笑み。彼は“亜里珠”ではなく“アリス”を求めていた。

「バランスを保つには、主人公を連れてくるのが一番。とでも思ったのかねぇ、黒ウサギは。」

「チェシャ猫さん。」

呆れるチェシャ猫。シロウサギの顔は真剣だった。

「もしかして、その黒ウサギって…。」

チェシャ猫はにやつくのをやめた。

「あぁ。君の双子の兄…」

「お兄ちゃん!!!?」

思わず亜里珠が声を上げた。

「まぁ、落ち着きなさいなぁ。まだ、続きがあるんだから。」

「…ごめん。」

チェシャ猫は続ける。

「兄…と、初代アリスの結合体というべきだねぇ。」

「初代、アリス…。」

ウサギと人の結合体なんて、とてもじゃないが亜里珠には想像できなかった。

「とても危険な存在と化してしまったよぉ…。そんな奴が相手でも、妹を助けたいかぁい?」

「うん、勿論。」

亜里珠の返事は即答だった。チェシャ猫はそれを聞くなりにんまりと笑う。
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