アリス人形
「仕方ねぇ…付き合ってやるかぁ。」

帽子屋はあくびをしながら亜里珠の横に立った。

「じゃあ、私達はここでお別れです。」

カナリヤの声に、亜里珠が振り返る。チェシャ猫は亜里珠の肩に手を置いた。

「チェシャも。そろそろ就寝時刻なんでねぇ。

さて、あそこに小さな扉があるだろう?」

指差す先には、高さ、わずか数十センチしかない扉がぽつりと在った。

「あそこで、ハリネズミが待っている。けどぉ、無視しなさいねぇ。」

亜里珠は小さくずっこけた。とりあえず頷く。

「トカゲのビルって子がいるから、その子に海までの道を案内してもらいなさいなぁ。」

「うん、わかった。」

「いい子ねぇ。」

チェシャ猫は、優しく亜里珠の頭を撫でた。

「海に着いたら、真実の虫…芋虫を捜しなさい。新たな扉を開いてくれるからぁ。
いいね、帽子屋?君はせめてこの子は守りなさいねぇ。」

「…おう。」

そして、帽子屋の頭も撫でた。帽子屋は照れくさそうに目線を落としていた。
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