アリス人形
「では、…これを。」

シロウサギは、クッキーを亜里珠と帽子屋に渡した。2人は、それをさっそく一口食べた。すると、

「「わっ!」」

まるで、階段を踏み外したみたいに視界が急降下した。周りが巨大化…ではなく、自分達が小さくなったことに気付いた。

「シロウサギ…?」

見上げる亜里珠に、シロウサギは哀しそうに耳を垂らした。

「申し訳ないです。急用ができまして…僕の案内は、一旦終了です。」

それを聞いた亜里珠は目線を下に落とした。シロウサギは慌てて言葉を付け加える。

「でも、後でまた、案内させて下さい。」

にっこり微笑むシロウサギをみた亜里珠は、大きく頷いた。

「うん!」

シロウサギはそっと小さな2人を両手ですくい上げ、扉の前まで連れてきてくれた。

「お二方、どうか…お気をつけて。」
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