今日は学校休んで君のところに行くつもり
10分休憩中の騒がしい教室が一瞬で静かになった。
去川がやってきたのだ。
「……さりかわー!やっと来た。久しぶりじゃん」
「ん」
いつもクラスの中心にいるムードメーカーが笑顔を浮かべて儀礼的な挨拶をした。
七日間も学校を休んでいた去川に対する排他的な空気を読んだらしい。
先日、球技大会で優勝したばかりの一組は、去川抜きで団結力を深めていた。
そんな凝り固まったクラスの輪に後から合流したもんだから、去川はますます浮いた存在になっていたのだ。
私の前の席にいる長谷川がノートを丸めながら振り返り、それを私の耳にあてた。
筒状になったノートから、「社長出勤かよ。ふつ一五限目からくるか?」と長谷川のこもった声が聞こえる。
「……」
「もしも~し。聞こえてるか?」
「おかしい。今日は休むはずなのに……」
私はこぼした。
「は?んで光部がそんなこと知ってんだよ。……仲いい、とか?」
お互いに不思議そうな顔をして見つめ合った。
今朝、起きたら去川からメールが届いていて、それは04:04に送信されていた。
『今日は学校休んで君のところに行くつもり』
たしかにそう書いてあったのに。
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