今日は学校休んで君のところに行くつもり
屋上のドアを開けると、太陽が空を真っ赤に染め上げていた。
日焼けして炎症を起こしたような赤い雲が燃え広がり、とても綺麗だ。
放課後、私たちは屋上で去川を待ち伏せすることにした。
長谷川が、「まずはガチで大丈夫なのか確かめてみるこった。心配しすぎかもしんねぇし」と言ったからだ。
日常的に使われる『死にたい』って言葉。
友達の口から出るそれは、どれくらい本気で言っているのかわからない。
『つらい』とか『もうやだ』とかもそうだ。
通り過ぎた本音って、きっといっぱいあった。
「それに、男ってのはかっこつけたがりだからな。『死んでみてぇ』とか言うやつゴロゴロいんだよ」
「去川はそんなんじゃないよ」
「わかんねぇって。光部の気を引きたくて言ってるだけかもしんねぇし」
「はぁ!?」
私の叫びは風にさらわれて空に舞い上がった。
「ただのかまってちゃんとは違うの!私にはわかる」
「かまってちゃんとは言ってねぇだろ」
「言ったようなもんじゃん。去川は本当にヤバかったんだから。日頃から『宿題多すぎ。しぬ〜』とか言ってる長谷川にはわかんないか」
「ほー。それか、生きる理由を探求する哲学的な僕かっこいい、なんて勘違いしてる自己陶酔野郎の可能性もあるな」
「なんだと!」
ここは教室と違って声のボリュームを絞らなくていい。
私は口を大きく開けて反論した。
「まじで怒ってんじゃん。去川のこと好きに見えんぞ」
長谷川がひるんだように顔を伏せたので、風のせいで口に入ってくる髪の毛をよけながら、「ごめん。付き合ってくれてるのに。怒ってないから」と私は謝った。
「べつにいーよ。屋上来てみたかったし」
長谷川は屋上の端の手前まで行って、「助けてくれ~!閉じ込められてるんだ~!」と一人芝居をして笑った。
「つまんない」
「ノリ悪いな」
「ひま。なんか話してよ」
「あ?なんかって何だよ。つーか暇なのは光部のせいだろ」
「長谷川だって去川のこと心配でしょう?ってか、怒ってるの長谷川の方じゃない?」
「怒ってねぇし」
「じゃあ、何でもいいから話して」
ドアとは反対側にある塔屋の壁に二人でもたれかかって、夕焼け空を見つめた。
「……こんなベタな場所で言うつもりなかったっつーか、なんつーか、さ」
「もしかして怪談?そういうの大好き」
「ちげぇよ。そんな話じゃない……。俺さ、おまえのこと……光部のこと…… 中学んときから……その、」
「なによ?もしかして悪口?」
「ちげぇよ!」
「しっ!」
だれか来た。