今日は学校休んで君のところに行くつもり





長谷川は「はー?めんどいやつ」と言いながら、チラっと前方にいる去川を見て、また筒のノートに口をつけた。



「つか、なんで屋上の鍵開けれたんだよ」
「天文気象部なんだって、去川。望遠鏡で観測するとき屋上によく行くから、鍵借りれるらしい」
「病んでるやつに渡すのは大問題だな」



ハラっと頭の中に『不撓不屈』の四字熟語がおりてきた。
球技大会のときの一組のスローガンだ。



去川が球技大会を無視して七日間も休んだ理由は、ここにあったんだと思う。
毎日溜まっていく疲労から目をそらし、だましだまし生きてきたけど、ついに自分でもごまかしが利かなくなった、そのとき、枯れ葉が落ちていくのが目に入った。



ああやって誰かに見られることもなく静かにいなくなりたい、と。



たまたま枯れ葉が枝から離れるのを見ただけでそんなことを思いつくなんてさ、長谷川の言うとおり病んでる。
だから今日も休んだ方がよかったのに。



「で、その後どうなったんだ?」
「うちにこさせた」



おまえん家!?と大きな声が耳に届いて、私はノートを奪い取って長谷川の頭をパコン!と叩いた。



「耳がいたいっつーの。こしょこしょ話してる意味わかってる?」
「すまん。でも、俺だってまだ一回も行ったこ…… っとないのは、どーでもいいんだけどよ。自分家に帰ればいーだろうが」
「それはそうなんだけど。 話の流れ?でうちに来ることになったわけ」



どんな流れか言ってみろ、とばかりに、また丸めたノートをリレーバトンのようにパシ!と渡された。



「え、なんか長谷川が不機嫌に見えるんだけど」
「ちげぇし。いいから話せって」




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