語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
 日埜家の子と出かけてくると言えば、マムは大喜びだ。マムは水樹家の人じゃないし、ダッドはグランマから聞く伝承レベルでしか水樹家の女性のことを知らない。

 日埜家とは緩い繋がりは続いていて事業提携もしていたり、何かのときには手を貸してくれたりしているけれど、もし私が結婚すればより強固な繋がりとなる。

 ああ、ごめんね、ダッド、マム。多分期待には応えられない。
 と思いながら、藤馬と日埜家の車で別荘地に行くのだった。

 避暑地はスポーツをするのに最適だ。私は綺麗な空気の中でマラソンやテニスを希望し、藤馬もそこそこ付き合ってはくれたものの、この辺で休みましょう、と言って別荘の中に誘導される。

 紳士な藤馬は「課題を一緒にやりましょう?」と言いはじめて、そこからじわじわと距離感をつめてきた。

 私は勉強が得意じゃないので、英訳の課題も片っ端から藤馬に聞いていく。考えるのを放棄するのは、良くないと思うけど、と言いながらも教えてくれる。

 だんだんと距離が近くなるのを感じたら、背中側から近寄られて、首にキスが落ちてきた。
 ピリッと痛みが走り、う、と声をあげてしまう。

 藤馬が息を飲む気配があったのは、離れてくれる合図かと思ったけれど、「困るな、痛がられると逆に」と言ってもう一度キスが落ちてくる。
 もう一度、私は呻く。
 後ろから藤馬の手が手が動くたびに、ピリピリと痺れる。
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