語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
 そう言ったら、藤馬は足の間に身体を滑らせてきて、触れてきた。所作は丁寧だし、恐らく優しく触れているはずだ。
 しかし痛い。

 痛い、痛い、痛い、しかし限界まで我慢!とスポコン魂で思う。でも、小さな痛みが重なっていって、とうとう、我慢が振り切れた。

「痛い、痛いです、無理!」
 と言ったら、藤馬は他の部分を触って来て、身体全体のこわばりを解そうとしてくるけれど、これもまた痛いだけだ。
 痛いと言っているのに、かえって勢いづく感じがあって、だんだんと腹が立ってくる。しゅるっ衣擦れをさせながら、シャツやボトムスを脱ぎ捨てていくのだ。
 いや、違うでしょ、無理なんですって、と思う。

「痛い」と言ったら、初めて唇にキスをされた。
 ビリビリッとしびれが来る。

 う、と声を出したら、藤馬が身体を寄せてきて、それを挿し込んで来ようとする気配があった。
 痛い、痛い、と言う言葉を聞き入れられないことへの怒りで、プッツンと自分の中で何かが切れる音を聞く。
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