語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
「痛いっつってるだろーが!」
 と言って私は藤馬を蹴り飛ばす。
 う、といううめき声とともに軽く吹っ飛んだので、あ、マズい、素人相手にやってしまった、と思う。

「ごめんなさい」
 と駆け寄ると、藤馬は非常に微妙な顔をしていた。何?と思ってみたら、蹴りの衝撃で「終わって」いたことを知る。

「すみません」と間の悪い顔で藤馬は言う。お互いに見つめ合い、頷いた。

 これは、なかったことにしよう。
 これからどれだけ生きるか分からないけれど、こんなに妙なやり方を通す関係を続けるのは、無理だとお互いに思ったのだ。
 始まる前に終わらせよう、と思った。
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