語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
「翡翠も私で施術の練習する?」と私が何気なく聞いたら、翡翠は目を見開いて、その上驚いた顔をするのだ。
「いや、やんない」
と言われた。
「プロ志望なのに、人を選ぶんだ?」
「朱那は無理、自信ない」
と言われてしまうのだ。
無理。
私が突きつけてきた無理、とはまた別の無理、がここに来て立ちはだかって来る。
無理とは、つまり翡翠は私とは接触したくないということだ。
どうしようもなく、避けられているんだな、と思う。
一生翡翠と結ばれることは不可能だとすら思えるのだ。
「無理って言われるの、きついってここに来て分かったよ。翡翠の無理は、私に触るの生理的にやだっていう無理でしょ?」
と聞いたら、この言葉にも驚かれるのだ。
「お前って、やっぱ感覚が常人じゃないと思う。暴走してる」
「翡翠は私に、ないとか、無理しか言わないし」
「生理的に無理、ではない。寧ろ」
「寧ろ?」
ぐいぐい聞いてしまうと、翡翠は顔を背けてしまう。
「いや」
「ほらフォローもない」
「朱那のテンポが早すぎんだよ、会話の余白がない。話聞かねぇし」
「意味わかんない」
「じゃ、分かんなくっていい」
で会話が終わる。
やっぱり好かれていない、と感じるのだ。