語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
 サロンのバイトに慣れてきた頃、オーナーの橙花さんに、
「朱那ちゃん、今後研修があるから行ってみて資格とったら?もっと施術の幅広がるし、ゆくゆくは自分のサロンも持てるよ」
 と言われた。

 研修の場所は地の利があったこともあり、私は乗り気になる。

 私には人の不調や疲れが黒いもやに見えているので、格闘技ではそこを狙う。逆にサロンでは黒いもやの部分を狙ってもみほぐしていくと、良くなった、と評判がいい。
 気まぐれに始めたバイトの割には、自分との相性の良さを感じていた。

 橙花さんを通して、研修の予約を取って行くことにしたら、翡翠が運転してってやろうか?と言う。

 聞けば、誕生日を迎えてすぐに運転免許を取ったのだと言う。この辺じゃ免許必須だし、と言うのだ。

 一緒に来てくれるなんて、どんな風の吹き回しだろう?
 疑問に思って聞いてみれば、「藍にしつこく言われた」と言う。
 脈のない翡翠が自発的に言ってくれるわけないので、「それでも嬉しい」と伝えておく。そしたら、翡翠が少し照れたような顔をするのが可愛かった。
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