財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
「お嬢さん、今日もご機嫌麗しく」
「うわっ……! びっくりした……なんですか、若様」
「若様って他人行儀だなぁ。久しぶりに会えたおにいさまなのに」
いきなり後ろから現れたのは、槻折家当主の長男で槻折優斗という私の異母兄だ。正妻の子なので、嫡男だ。今は一人暮らしをしている。
正妻と過ちの子だが、仲はいいと思う……多分。
「……私と話してるとまたガミガミ言われますよ、優斗さま」
「はぁ〜俺、もう子どもではないから母様のガミガミなど痛くも痒くもない」
「そういう問題じゃないです、……旦那様のとこ、行くんじゃないのですか?」
「そうだった。じゃあ、またね愛百合」
彼は仕方ないという表情をしてヒラヒラと手を振って、書斎の方へ歩いていった。そしていつものように書斎で話をして帰って行った。