財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。



 リビングに戻り、私はソファに座ってため息をついた。

 ため息の理由は彼と話をした『半袖』のことだ。確かに暑くなってきたし、半袖にするのが普通だ。だけど、私は半袖は着ない……いや、着られない。
 袖を捲ると出てくる傷だらけの腕、それに見えなくなる場所にいくにつれたくさんの古いあざが目立つ。これは、私が槻折家に引き取られた時に奥様に殴られ付けられた痕だ。
 奥様とは会ったことはなかったけど、槻折家で働いていたため母とはあったことがある。私は、彼らの一夜の過ちで出来てしまった子だ。


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