財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
◆葵side◆
「……社長、そろそろそれやめてくれませんか?」
「それ、とはなんだ……はぁ」
「その、連続ため息です。朝からずっとうるさいんですが」
俺は会社に出勤後、スケジュール通り働き現在お昼ご飯中だ。愛百合ちゃんが作ってくれたお弁当を頬張っている。話をしているのは秘書だ。
「愛しの婚約者さんのお弁当なのに、どうしてそんなにため息を?」
「それは、朝……」
朝の出来事を全て話をした。
「婚約者さんは、要らないと言ったんですよね。私はいい、と」
「あぁ、最近暑くなって来たし……半袖持ってないようだったから買ってあげたくて」
「それは、社長のエゴだと思いますけど。いいと言ったなら何か理由があるのでは? 半袖を着られない何かがあると僕は思いますが」
「理由? なんだ、それは」
「知りませんよ。はい、仕事の時間が来るので食べてください」
冷たい秘書に言われて、美味しさを噛み締めながら弁当を完食した。