財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
「ま、黒だった。あれ、やばいですね」
「そうか……」
「だが、黒くないのは当主なんだよなぁ……厄介だけど。当主は、ただただ跡継いで言われるように結婚して、その過程で手を出しちゃったぽい。欲を満たしただけ」
封筒から、資料を出して【槻折家】の報告書を読む。
その中で彼女が長袖にこだわる理由がわかった。それと同時に、怒りが沸いて紙に皺が広がっていくのがわかる。
「もっと早く迎えに行けばよかったと思ってます?」
「……あぁ」
「それは無理ですね。周りがあーだこーだ言われる立場のまま行ったらこっちのめんどくさい親族がウザくなるだけだと言ったのは貴方ですよ」
それからガミガミ言われながら俺は、彼女に出会った日のことを思い出した――。