財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
「……すまない。半袖が嫌なのは、あれが見えてしまうからか?」
「そう、です。あの、葵さんっ!」
「ん?」
葵さんは、想像とは違って優しい声で「どうした?」と問いた。私は居た堪れなくて、起き上がりベッドの上だったが正座をしてベッドに額がつくまで頭を思いっきり下げた。
「本当に、本当に申し訳ありません」
「え、愛百合ちゃん!? そんな、土下座なんてやめて。ね、顔を上げて!」
葵さんは、私の肩をガシッと掴み上半身を起こさせた。
「で、でも。騙したように、こんな……っ」
旦那様からは、こちらから願い出たと聞いている。彼も突然のことだったはずだもの。
「俺は気にしていない。それにさ……本当は、騙したのは俺らの方なんだ」
「……俺ら?」
「俺が、父に頼んで仕組んでもらった縁談なんだ」
「え、でも私……だ、父から閨閥結婚だと聞いてます」
「申し出は、槻折家からとなっているから閨閥結婚だということになってると思うんだけど……最初はこちらから仕掛けたことなんだよ。それに父はお酒の席だったから色々覚えてないこと多いんじゃないかな、と言っていたよ」
え、え?この結婚ってそんな簡単な感じで決まったの?