財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。


「あ、あと。俺からお菓子送ったらなんかすぐに了承してもらえた。槻折家のご当主様は甘いものがお好きだと聞いていたので」

「え、じゃあ、この縁談は……葵さんが願って実現したものってことでしょうか」

「そうだね。俺は君のことずっと好きだったから。だから謝る必要はないんだよ。謝るべきは俺だ。俺の一方的な感情で、結びつけたんだから」


 そう葵さんは言いながら私の頭を撫でた。そして「父は俺には甘いんだ」と付け加えて言った。


「……っ……」


 この縁談のことはわかったけど、好きだったっていつからだろう。会ったこともないはずだ。


「好きだった、というのは……いつの話でしょうか? 私、社交場に出たことは疎か表に出たことがないのですが」

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