財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。



「愛百合、食べなさい。君のためのお菓子だ」

「……? 私のため、ですか?」

「あぁ」


 私は彼らの表情を伺いながら、目の前にある焼き菓子の一つパステルカラーのマカロンをひとつ手に取り口に運んだ。

 口に入れると中でサクッと音がして、溶けてなくなってしまった。美味しい……こんなの食べるの初めてだ。


「どうだ? 美味しいか?」

「はい。とても美味しいです……初めて食べました」

「そうか、良かった」


 旦那様はとても嬉しそうに笑う。それがとても不気味に感じられる。
 いつも以上に上機嫌で、紅茶は彼らと同じ茶葉だし焼き菓子。今までなら、こんなことありえない。




「では、本題を話そうか。愛百合」

「はい、なんでしょうか?」


 こんなおもてなしを受けた後だから何か爆弾があるに決まってる……本当に怖すぎる。



< 4 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop