財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
パーティー
想いを伝え合って数日後。
「愛百合ちゃんは、この柄が似合うと思う」
「え、派手じゃないですか? これ……私、平凡顔ですよ?」
「平凡? そんなわけないだろ? 愛百合ちゃんは、天使のように可愛らしいし綺麗だよ」
私は葵さんに連れられて呉服屋に来ていた。一ヵ月後に私たちの婚約パーティーを催すことになったので本振袖を仕立ててもらうために反物を肩に乗せられて当てられる。
「これ、琳派の品ではないですか?」
「お、当たり。雲取・四季花・千羽鶴が描かれていて美しいだろ? 愛百合ちゃんにピッタリだ」
いやいや、こんな華やかで生命力が溢れているお品……似合わない。
私にはすみに追いやられているが、薄紫の色地に水が流れるような紋に貝桶の柄と四季の花を上品に染め上げられているこれがいいな。勇気を出して声を掛ける。
「葵さん、私これがいいです」
「あ、流水紋のだね。これ綺麗よね、着てみる?」
販売員は、葵さんが何か言う前に私を連れて着付けの場所に案内した。