財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
「愛百合ちゃん、これを」
「指輪……ですか?」
「あぁ。婚約指輪だ。これは、御子柴家の嫡子に受け継がれる指輪なんだ。御子柴家の当主となる者はこれを伴侶に渡すのが習わしでね、代々手直しされて受け継がれている。だから、これは君のものだよ」
「そんな大事なものを私がもらってもいいのですか?」
代々受け継がれるようなものをもらうなんて荷が重い。重すぎて怖い。
「君の為に治してもらったんだよ。それに、これをもらってしまったら君は俺から逃げられないよ。御子柴家はみんな一途で愛が重い体質だから」
「……え?」
「それにこれをしているということは、御子柴家当主が認めた娘ということだから誰も文句は言えなくなるんだよ」
そう言って彼は髪が崩れない程度に頭を撫でた。